【私訳】名作文学Vol.1:開いた窓(第8回)

少女ヴェラが語った「一家の悲劇」に圧倒されるナッテル氏。

そこへ、ついに家の主人が姿を現します。

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サキ『開いた窓』

She broke off with a little shudder. It was a relief to Framton when the aunt bustled into the room with a whirl of apologies for being late in making her appearance.

彼女(ヴェラ)は小さく身震いをして、話を打ち切った。叔母が、顔を出すのが遅れたことへの謝罪の言葉をまくしたてながら、慌ただしく部屋に飛び込んできたとき、フラムトンは心底ほっとした。

“I hope Vera has been amusing you?” she said.

「ヴェラがあなたを楽しませてくれていたかしら?」と彼女は言った。

“She has been very interesting,” said Framton.

「ええ、とても興味深いお話でした」とフラムトンは答えた。

“I hope you don’t mind the open window,” said Mrs. Sappleton briskly; “my husband and brothers will be home directly from shooting, and they always come in this way. They’ve been out for snipe in the marshes today, so they’ll make a fine mess over my poor carpets. So like you menfolk, isn’t it?”

「窓が開いているのを気にしないでくださいね」サプルトン夫人はハキハキと言った。「夫と弟たちが狩りから真っ直ぐ帰ってまいりますの。いつもこの窓から入ってくるんですよ。今日は沼地にシギ狩りに出かけておりますから、私の大事な絨毯をひどく汚してしまうでしょうけれど。男性って、本当にそういうものですわね?」

考察ノート

1. 語彙・表現のポイント

  • Break off : 「(急に)話を止める」「中断する」。ヴェラが言葉を途切れさせたのは、単に話が終わったからではなく、恐怖に耐えかねたかのような「演出」です。この絶妙な間(ま)が、ナッテル氏の不安を煽ります。
  • Bustled / A whirl of apologies : 叔母の登場シーンは、静かで不気味だったヴェラとの対比で、非常に動的で騒々しく描かれています。「whirl(渦)」という表現が、彼女のエネルギーを象徴しています。
  • Directly : ここでは「直接」というより、時間的に「すぐに」「間もなく」という意味で使われています。

2. 構文・英文法のチェック

  • It was a relief to Framton when… : 形式主語のIt。ナッテル氏がヴェラの話にどれほど精神を削られていたかが、この「relief(安堵)」という一言に凝縮されています。
  • Late in making her appearance : 「姿を見せるのが遅れたこと」。動名詞を使った、当時の教養ある階級らしい少し丁寧な言い回しです。

3. 当時の背景と皮肉

  • Menfolk(男連中) : 夫人が親しみを込めて使うこの言葉が、ヴェラの話(男たちは3年前に死んだ)を信じ込んでいるナッテル氏にとっては、狂気の沙汰、あるいは幽霊の妄執のように聞こえているという皮肉な構図になっています。
  • カーペットの汚れ : 現代人からすると些細な悩みですが、当時の主婦にとっては一大事。夫人の日常的な愚痴が、ナッテル氏の異常な状況をより際立たせています。

[ 権利・ポリシーについて ]

  • 原作: Saki (H.H. Munro) ‘The Open Window’ (1914)
  • 著作権: 本作は著者の没後70年以上が経過したパブリックドメインの原文を使用しています。
  • 私訳: 本文中の和訳および解説は、当ブログ(havefun3.com)が独自に執筆したオリジナルの著作物です。
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