【私訳】名作文学Vol.1:開いた窓(第3回)

今回は、気まずい沈黙の中でヴェラがナッテルへの「品定め」を終え、いよいよ会話の主導権を握る場面です。

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サキ『開いた窓』

“Do you know many of the people round here?” asked the niece, when she judged that they had had sufficient silent communion.

「この辺りにお知り合いはたくさんいらっしゃるの?」と、二人の間に十分な沈黙の交流があったと判断したとき、姪は尋ねた。

“Hardly a soul,” said Framton. “My sister was staying here, at the rectory, you know, some four years ago, and she gave me letters of introduction to some of the people here.”

「ほとんど誰も」とフラムトンは言った。「姉が四年前、ここの牧師館に滞在しておりましてね。それで姉が、現地の何人かの方に宛てて紹介状を書いてくれたのです」

He made the last statement in a tone of distinct regret.

彼は、最後の言葉を明らかな後悔の入り混じった口調で口にした。

考察ノート

1. 語彙・表現のポイント

  • Silent communion: 「沈黙の交流」。本来は宗教的な深い交わりを指す格調高い言葉ですが、ここでは気まずい沈黙を表現しています。
  • Hardly a soul: 「ほとんど誰も(~ない)」。 否定的な意味で「人(soul)」を強調する、この物語で繰り返される表現です。
  • Rectory: 「牧師館」。当時のイギリスの田舎町では、教会が社交のハブであり、宿泊や滞在の拠点でもありました。

2. 構文・英文法のチェック

  • when she judged that…: 「〜だと彼女が判断したとき」。15歳の少女ヴェラが、受け身の姿勢ではなく、ナッテルの様子を冷静に観察して主導権を握っている様子がわかります。
  • had had (past perfect): 過去完了形です。 姪が質問を投げかけた時点よりも前に、「沈黙の時間」が十分に経過していたことを示しています。

3. 当時と現在の比較(時代背景)

  • 四年前の記憶: 姉が滞在していたのは四年も前のことであり、ナッテル自身はこの土地について完全に無知であることを認めています。
  • 後悔の口調 (tone of distinct regret): ナッテルにとって、姉に勧められたこの社交訪問が、神経を休めるどころか苦行(regret)になっていることが読み取れます。

[ 権利・ポリシーについて ]

  • 原作: Saki (H.H. Munro) ‘The Open Window’ (1914)
  • 著作権: 本作は著者の没後70年以上が経過したパブリックドメインの原文を使用しています。
  • 私訳: 本文中の和訳および解説は、当ブログ(havefun3.com)が独自に執筆したオリジナルの著作物です。
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